尊厳死宣言書とは、病気が「不治かつ末期」になったときに、自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置はしてほしくない、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えたいという意思を表示するための宣言書のことをいいます。
自分らしく生きたいと同じく、自分らしく死にたいという意思表示であるといえます。
現在、日本では尊厳死についての法律がないため、そのような文書があっても確実に実現される保証はありません。
とはいえ、日本尊厳死協会の調査によると、実際に末期状態になって「リビング・ウイル」(終末期医療についての意思表示を書面ですること)を提示した際に、9割以上の医療関係者が本人の希望を受け入れたことから、実現の可能性は高いと考えられています。
医療行為に関する判断は本人しかできません。
しかし、現実の社会では本人に意識がなく意思表示ができない場合、医師は家族に意見を聞き、手術の同意や延命の判断を求めます。
よって、尊厳死を実現するには、医師と家族両方の協力が不可欠です。
家族間で意見の対立があっては困りますので、あらかじめご家族の了承を得ておかれることをお勧めいたします。
なお、遺言書に、尊厳死宣言を記載するのは不適切といえます。
なぜなら、遺言書は死後の事項に関することを書くものであり、死亡後に効力を発揮するものだからです。
「尊厳死宣言書」の書き方は法律で決まっているわけではありませんが、本人の意思を明確にして後日のトラブルを防止するために、公正証書でつくるのが望ましいといえます。
私たちは、尊厳死宣言書作成の相談、文案の作成等をお手伝いさせていただいております。
また、高齢者施設に入居されている方の身元引受人をさせていただいているケースでは、万一意思表示ができなくなった場合に備えて、尊厳死宣言書や医療における事前指示書、医療における同意代行者の指定書等をご準備いただき、緊急時の対応をさせていただいております。
本来、医療に関する判断は本人にしかできません。しかし、意識のない方、判断能力の衰えた方についても、医療の判断は必要です。医療の現場では、家族に医療に関する判断を求めてきますが、家族だからといってそれらの考えを知らないことは多々あります。
人工呼吸器をつけるかどうか、このような大きな判断を本人の考えがわからなければ、周りの方が悩みながら判断しています。
自分の考えを伝えることの大切さに気付いていただければと思います。